カウントダウン

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困ったような頼りない瞳。 握り返した掌は氷のように冷たかった。 冷たさが俺の熱を奪って行く。 「え?」 離さないままでいる俺を不思議そうに見る。 「繋いでたら少しはあったかいかと…あ、もうカウントダウンだ」 「まだ、返事聞いて…」 「2、1、明けまして、おめでとうございます」 「シュウ…」 「握手してるのが返事でしょ。コウさん、今年も宜しくお願いします」 「うん。こちらこそ…」 「そうだ。今から保志乃合神社、初詣に行きませんか?」 「今から?昼間行ったし…」 「それ、昨年でしょ」 「あ、そうか。でもアルコール入ってるからな。朝になったら行こうか」 「俺もだった。石龍さんと飲んだんですか?」 「ん、蕎麦屋で一寸」 「あー、コウさんのせいで年越し蕎麦食いそびれた」 「昼にご馳走するよ」 「それ、ただの蕎麦だし」 「そうか」 笑った。 つい数時間前までは、もう関係ないと思っていたのに。 多分、いつも、追わない、踏み込まないのは俺なのだろう。 境界線は其処にあるのじゃなくて、俺が引いているのかもしれない。 ポケットの中で、掌が少し温まって来る。 ギュッと握ると、何?という顔をした。 「…家でいいのに、なんでこんな所に居るんですか?」 「うん…なんか、此処で初めてシュウと会った気がして…」 「衝撃的出会いでしたね」 「そう?」 「まぁ、俺的には」 「あの頃は…何があったんだか…どうしようもなかったな」 小さな星々が瞬く、元旦の夜空を見上げて、ぽつっと言った。 今でも、時々そんな顔をする。 どうしようもない世界を見るみたいに。 そんな言葉を飲み込んだ。 「そろそろ帰りましょうか?冷えて来た」 「うん…」
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