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コウさんに尋ねてみようと思いながら
数日が過ぎ、力を入れて作った年末年始号の発行日の前日のこと。
遅い昼休みに携帯にコウさんから度々の着信と「今すぐ来て」とメールが入っていた。
今すぐは無理でしょ。これでも仕事中だし。コウさんは時々子供みたいなことを平気で言う。が、なんとなく怒っている気がする。
心当たりはある。
保志乃合神社の狐を修復したコウさんの名前を記載したことだ。
必要ないと言われたが、俺はやっぱりコウさんの名前を載せたかった。
二度目の校正でOKが出た後で頼んだ。
台車に積まれたままの段ボールを前に、案の定、猛烈に怒っていた。
余りの剣幕に、怒られていることを忘れた。
この人、こんなに感情的になるんだ。
とか、
クビって、俺、雇われてたの?とか、
悪いことをしたわけでもなし、嫌がる意味がわからない。とか、
実は自意識過剰なんじゃないか。とかぼんやり考えていた。
「石龍さんの広告に無断でイラスト入れて」
「無断じゃないです。ちゃんと了承貰いました」
「いつ?」
「入稿の前です」
「僕は了承してないよ。その裏表差し替えるから」
「は?何言ってんですか。役所だって、きっとぶっ壊れたまま持ってたくらいにしか思ってない。あの狐が戻って来たのは神社にとって、本当に心願成就なんです。痛々しいままでなく生まれ変わったくらいに綺麗になって。コウさんのお陰でしょう?コウさんがいなかったらまだスワハラで座ってたかもしれない。此処の見開きは俺に任せるって言ったじゃないですか」
「言ったけど勝手していいとは言ってない」
「誰もコウさんの名前なんか気にしてませんよ」
「え…」
コウさんの表情が一瞬曇ったのに、しまった。と思ったが止められなかった。
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