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社務所の前では、二人がお神酒や甘酒を振る舞っていた。
俺達の姿に綺麗な顔が綻ぶ。
「おめでとうございます。よくお参り下さいました。お二人にとって良い一年になりますように」
アカリさんが俺に向かってウインクしたのを見て、コウさんが怪訝な顔をする。
「あの…新聞はもうありませんか?アカリが手渡しするもので直ぐになくなってしまって」
「また、人のせいにして」
「ありがとうございます。お持ちします。シュウが頑張ってくれたお陰でとても評判が良くて嬉しいです」
「そうですね」
本心なんだかわからないが、穏やかな笑顔で応じているコウさんに少しホッとする。
「おや、その盃…紙で出来ているんですね」
お神酒を断ったコウさんが手元を覗く。
「どうぞ。ハクとテンの手作り」
「綺麗ですね。名は体を表すと言うように、文字にもその人が映る。ハクさんは本当に美しい」
「え?コウさん、ハク様の字が判るですか?」
「勿論。シュウが自慢気に御朱印見せてくれただろ」
「そうですけど…」
「心願成就…か。道は険しく遠いな」
「いえ、願えばいつか叶いますよ。月代さんの心願も」
テンテンに言われて、コウさんは照れ笑いを浮かべた。
コウさんの心願…
「あ、俺、新聞持って来ます。100でいいですか?」
「200。持てる?」
「なんとか」
心願成就と書かれた紙の盃を光に翳しながら談笑する三人を見て、車に戻った。
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