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「どうだった?揺り籠は。アマネ君」
「シュウでいいです。シュウで。思ってたより小さくて細かく編んでありましたね。遠目なんで質感とか重さはわからないけど」
「また朔薇さんにお願いしてみよう。あの人の片目は光の加減で翠色に見えるんだよね」
「え?」
「そうだ。隣の龍谷寺にも天井に龍が居る。見て行く?山門は向こうだから周るけど」
「はい」
神社と違いひと気もなく、ひっそりとしている、
本堂は開け放たれていて香が焚かれているわけでもないのに、白檀の香りが染み付いていた。
天井には黒い龍が目をギョロリと見開いて睨みつけていた。
ぐるりと天井を見上げていて視線が留まる。迫力のある顔と、天空を駆けているかのような胴体の端に、別の白い龍の尾が絡んでいるように見えた。
「コウさん、あれ」
「うん。アマネ君は案外目が良いね」
「シュウでいいってば」
「この龍の腹にも見えるし、白い龍が絡んでいるようにも見える」
「神社の龍?」
「み方によっては。だな。彼は此処で瞑想しつつ不思議話をしたためたのだろうね」
「ひと気がないですね」
「うん、今は用向きで他所の寺から来て貰っているらしいよ。開け閉め管理は天津家でやってる」
「神社に寺に忙しいですね」
「朔薇さんは忙しいくらいで丁度良いかも」
「龍…」
「龍の眼は赤いけど?」
「でも、神社の龍の眼翠色でしたよ」
「よく観察していました」
墨色をした龍は、白い目玉をむいて、俺達の話を聞いているようだった。
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