哭き龍

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隣り合う小さな寺と神社を後にした。 既に4時を回り、陽は傾き始めている。 「さて、正月だし、何か美味い物でも食べに行こう」 「ゴチになります」 「うんうん。11月12月と凄く頑張ったから、金持ちだし」 「何頑張ったんです?」 「塾の先生に頼まれて家庭教師の掛け持ち」 「塾?え?コウさん、塾講師してたんですか?」 「あれ、言ってなかった?」 「あー、もう、なんか…なんかだな。先生してるの、想像つくような、つかないような。ま、いいけど」 「Pandoraの為に働いているんだよ」 「優秀な人はつぶしが効いていいですね」 「何それ、嫌味?」 「いえ、本当のことですよ。へぇ、塾講師かぁ…ふぅん。ベタ理系なんでしょう?」 「うん」 「はぁ…ツキシロコウランといい、なんか…」 「アマネ君と同じだろ?」 「あ」 思わず顔を見合わせて笑ってしまった。 海岸沿いにあるホテルでリッチなディナー。 暗くて、窓の外に広がるだろう海の景色は見えなかった。代わりに俺はコウさんばかりを見ていた。 ナイフフォークは使い慣れているんだ。とか、綺麗な食べ方をするんだ。とか、そんなどうでもいいこと。 「そうだ、まだ聞いてなかった。シュウの今年の抱負」 「え、また、そんな先生みたいな。抱負かぁ。うーん…取材頑張って紙面を充実させます。みたいな…」 「みたいは余計。僕も今年は発行部数を3000にする。シュウの配布リスト見て、広告の取り方も少し考えたいし、頼りにしてるよ」 「頼りないけど。でしょ?頑張ります」 「あの残2って何?」 「それは…コウさんと俺の分」 「あー、なるほど。シュウってホントいい奴だな」 「今更?」 「うん。色々今更」 そう言って笑った。
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