地雷

4/9
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/67ページ
段ボールを開けると、インクの匂いが広がる。 一部取り出して見る。 見開きは御朱印巡りマップ。花見以来の力作だと思う。 狐のbefore afterは確かに御朱印とは関係ないかもしれないけれど、寺社仏閣の由来ご利益、詰め込めるだけ詰め込んだ情報と、俺の思い入れには外せなかった。 永年の探しものを引き合わせただけでも凄いことだし、川底から見つかったまま運んでもいいわけだし、金の問題じゃないけど、何もコウさんが大金はたいてしてあげなくてもいいと思った。名前は出さなくていい。とか、却って嫌味に聞こえる。 クビって、雇われてたわけでもないのに、なんだそれ。 年末年始号はページが2枚多いボリュームで、更にいつもより1000部多い。 勢いで持って来たけれど、数日間でどれだけ配れるだろう。 我ながら、この行き当たりばったりな性格に溜息が零れた。 玄関先に邪魔だから早く片付けなさい。と言われながら、配達先のリストを照らし合わせ、取材させて貰った神社に配れば3000は楽勝…か? とりあえず、明日朝イチで保志乃合神社へ行こう。 あの子狐を運んでから行ってない。 コウさんは書類にサインが欲しいとか、ひびの入った玉を貰ったとか、なんだか嬉しそうにしていたから、何度か訪ねているのだろう。 あの時は、またコウさんとどんな景色を見られるのか楽しみだったのに…。 段ボールを下ろして、台車を返しに行った。 灯りはまだ点いていたけれど、入口に立て掛けて黙って帰った。 風が止んで、何度目かの溜息が白く零れ落ちた。
/67ページ

最初のコメントを投稿しよう!