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段ボールを開けると、インクの匂いが広がる。
一部取り出して見る。
見開きは御朱印巡りマップ。花見以来の力作だと思う。
狐のbefore afterは確かに御朱印とは関係ないかもしれないけれど、寺社仏閣の由来ご利益、詰め込めるだけ詰め込んだ情報と、俺の思い入れには外せなかった。
永年の探しものを引き合わせただけでも凄いことだし、川底から見つかったまま運んでもいいわけだし、金の問題じゃないけど、何もコウさんが大金はたいてしてあげなくてもいいと思った。名前は出さなくていい。とか、却って嫌味に聞こえる。
クビって、雇われてたわけでもないのに、なんだそれ。
年末年始号はページが2枚多いボリュームで、更にいつもより1000部多い。
勢いで持って来たけれど、数日間でどれだけ配れるだろう。
我ながら、この行き当たりばったりな性格に溜息が零れた。
玄関先に邪魔だから早く片付けなさい。と言われながら、配達先のリストを照らし合わせ、取材させて貰った神社に配れば3000は楽勝…か?
とりあえず、明日朝イチで保志乃合神社へ行こう。
あの子狐を運んでから行ってない。
コウさんは書類にサインが欲しいとか、ひびの入った玉を貰ったとか、なんだか嬉しそうにしていたから、何度か訪ねているのだろう。
あの時は、またコウさんとどんな景色を見られるのか楽しみだったのに…。
段ボールを下ろして、台車を返しに行った。
灯りはまだ点いていたけれど、入口に立て掛けて黙って帰った。
風が止んで、何度目かの溜息が白く零れ落ちた。
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