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翌早朝、まだ目覚めていない朝。
背中に100、後ろに300部を括り付けて出発した。
辺りは暗く、張り付く空気は刺すように冷たい。
身体が強張って、なんだか酷く淋しい。
背中にゆっくりと朝が近づいて来るのを感じながらも、木立に囲まれた山は静寂の中で朝陽を待っていた。
階段下にバイクを停めて、見えない鳥居を見上げた。
足元を小さなLEDライトがゆらゆらと照らすほどの暗さの中を一段ずつ登る。
吐いた白い息をまた吸い込みながら、夕べは、コウさんに謝っていないことを思い出す。
俺だけが悪いわけじゃないと思うけど、売言葉に買言葉。
いや、日頃、なんとなく思っていて、でも口に出さないことが吹き出した。
差し替えると言ってた。
全部持ち帰っだけど、あの人のことだから3000部新たに刷り直しかねない。
背中が急に重く感じた。
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