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「これ、月代さんに」
神社の印の入った薄い紙袋を手渡される。
後ろにはテンテンとアカリさん。
「あ、はい。ありがとうございます。えぇと…どうされたんですか?」
「俺らが下迄行けぱいいだろってことで。沢山ある?」
「300」
「じゃ、丁度100ずつ」
「そんなにいいですか?」
「no problem」
「あーすみません。ありがとうございます」
なんだか急に距離が縮まったような彼の口調が可笑しかった。
「あの…宝物が戻って来て、皆さんの心願は成就されたのですか?」
「…いえ」
「次は主だな」
「主…神主さん?募集してるんですか?」
「募集ねぇ」
「そう…月代さんのような方」
「コウさん?」
「それはハクの好みだろ」
「いえ、私もそう思います。月代さんのような方には初めてお目にかかりましたから」
「まぁ、二人の好みはともかく、望み探し求めて、此処まで辿り着く主でないと駄目なんだ。ハローワークに求人かけるのとは一寸違う」
「そうなんですね。コウさん…か」
「大丈夫。そんな悲しい顔をしなくても元どおりになれますよ」
「…」
話をしているうちに入口に着いた。
100部ずつ手渡し、お礼を言った。
テンテンが
「またお二人でお参りにいらして下さいね」と微笑んで言った。
俺は黙って頷いたけど、悲しそうな顔をしていただろうか。
一周配達して戻るつもりだったが、真っ直ぐ家に戻り、ハク様からの預り物はメモを付けて郵便受けに入れた。
室外機が回っていたから、中には居るのだとは思ったけど、昨日の今日で、保志乃合神社に400も置いて来たとは言えなかったし、どんな顔をして会えばいいのかわからなかった。
また直ぐ、新聞を積み込んで近隣周りに出掛けることにした。
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