2人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
※
「住めば都…なのかなぁ」
六畳の和室と別に小さなキッチン(台所と呼ぶ方が相応しい)、勿論お風呂とトイレは一緒だ。シャワーカーテンを引いてこまめに掃除をするようにしよう。実家から持ってこようと思っていたあれこれはこの面積には入らない。選別と諦めを重ねて、私の荷物は最低限の家具や家電、数箱の段ボールに落ち着いた。
ベランダの鍵をパチンと回して、窓を開ける。磨りガラスの向こう側には、ぽっかり開けた駐車場。真っ直ぐ照らすように日の光が差し込んでくる。
「日当たりは百点なんだよね…」
しかし古さと汚さはすぐには拭えない。
私は気合を入れるように両の手で頬を挟んだ。
「まずは掃除を徹底的に!今日からここが私の家だもん!よろしくね!」
誰かの返事がある訳でもないのに、大きな声はくすんだ茶色の天井に上って、新しく替えられた畳の上に落ちていった。
最初のコメントを投稿しよう!