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「はい、一ヶ月前の『ダイニングの悲劇』ですね」
小指が緊迫した状況である事を小由季はつゆ知らず、母の節美が作っている朝飯の匂いを呑気にかいでいる。テレビでは今日の占いをやっていた。
「母体の生年月日はいつだ?」
「八月生まれなので獅子座ですね。今日は二位で、恋愛運が特に好調です」
「母体は喜ぶかもな。だがこうやってうかれた時に事故は起きやすい」
母体の一親等が朝飯を運んで来た。二人の小指を守る総督達が連絡を取り合う。
「こちら小由季の小指防衛軍総督。今の所異常なし。どうぞ」
「こちら節美の小指防衛軍総督。我々も異常な……おい!どうした!」
にわかに節美の小指防衛軍支部の動きが慌ただしくなる。緊迫感が小由季陣営にも手に取るように伝わる。
「方向転換できるか!?転倒してもかまわん!」
スピーカー越しに尋常ならざる警報音が鳴るのが聞こえて来た。
「テーブル脚が接近!ダメです!回避出来ません!うっ!うわー!!」
けたたましい衝撃音の後、砂嵐のようなノイズ音が小由季の小指防衛軍支部に虚しく響き渡る。
「応答せよ!誰か!誰か!……おい……」
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