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幽霊が死んでいる。
他にどう表現していいのかわからないけど、
幽霊が死んでいる。
アパートの僕の部屋の中で、幽霊が首を吊って死んでいる。
帰宅時、背広の上着を脱ぐべきか着るべきか迷うくらいの日。吸い込む息からは湿気が大分と薄れ、喉の通りが良い。日は既に暮れているが、虫がさざめくにはまだ季節が早い。
駅の隣の定食屋。僕は680円のアジフライ定食で腹を満たし、自宅まで5分程歩く。まだ時刻は19時過ぎ。眠るまで時間は取れるが特にやりたいことも見つからず、どうせ漫画でも読みながら無為に過ごすのだろうと少し嫌な気分になる。嫌な気分になったついでに、また明日出勤しなければならないことに憂鬱を感じ出し、胃の上あたりに重力が集まる。
途中、自販機で冷たい缶コーヒーを買い、お釣りを全て10円玉で返されたことに腹を立てながら自室の扉の鍵を開ける。キッチンと廊下を兼ねた通路を通りすぎ、寝室とリビングを兼ねた自室へ入る。
自室へ入ると、天井から女性がぶら下がっていた。
何なのかよくわからない。
白い服を着た髪の長い何者かが、天井からぶら下がっている。
首にロープをくくりつけ、ぶら下がっている。
動かない。
死んでいる。
何者かが僕の部屋で自殺している。
鍵は掛かっていた。
ベランダにも鍵は掛かっていたはず。
にも関わらず、何者かが僕の部屋に侵入し、自殺している。
意味がさっぱりわからなかった。
意味はさっぱりわからなかったが、とりあえず僕は警察を呼ぶことにした。
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