第一話

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「特に悪化はしてないようだったよ。」 「そうでしたか、良かったです。」 「あぁ、このまま良くなればいいね。」 「はい」 私は、幼い頃に視力を失った。 幼稚園で起こった立てこもり事件の時、 私は転がっていった自分のおもちゃを取ろうとした時に、動くなと怒られ、見せしめと称して目を切られた。両目とも切られたから、今では何も見えない生活を送っている。 まあ、何も見えなくなってから、もう10年以上経ってるから、このままでもいいと思ってる。 今私は、小説家として生きている。 それなりに稼ぎもあるし、本は売れている。生活には目が見えないこと以外そこまで困っていない。 「今日はこの辺で帰りますね、大場さん、ありがとうございました。」 「このくらい、いつものことだよ。あまり、頑張りすぎないようにな。」 「はい、あっ…今、何時ですか?」 「今は…5時だよ。」 「もう5時ですか…ありがとうございます。」 「あいよ」 「では、」 「またな」
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