いつもの渋谷の風景

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いつもの渋谷の風景

 渋谷のスクランブル交差点のど真ん中で、男がしゃがみこんで泣いている。  真っ白でありながらサラサラとした長髪で、表情は伺えない。  もうすぐ、信号は赤になる。  男は、立ち上がる気配はない。このままでは、事故死するだろうが、誰も足を止めて男を助けようとする者はいない。 「泣いている人がいるというのに、なぜ誰も助けようと思わないの? これが、文明社会ということか」  そう言いながら、一人の制服姿の女子高生が近付いて、泣いている男を抱え起こした。 「君は……」 「大丈夫ですか。何という世の中なんですかね。文明とは、人を見捨てることを言うのでしょう」  男は、驚きを隠さなかった。
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