18人が本棚に入れています
本棚に追加
/286ページ
いつもの渋谷の風景
渋谷のスクランブル交差点のど真ん中で、男がしゃがみこんで泣いている。
真っ白でありながらサラサラとした長髪で、表情は伺えない。
もうすぐ、信号は赤になる。
男は、立ち上がる気配はない。このままでは、事故死するだろうが、誰も足を止めて男を助けようとする者はいない。
「泣いている人がいるというのに、なぜ誰も助けようと思わないの? これが、文明社会ということか」
そう言いながら、一人の制服姿の女子高生が近付いて、泣いている男を抱え起こした。
「君は……」
「大丈夫ですか。何という世の中なんですかね。文明とは、人を見捨てることを言うのでしょう」
男は、驚きを隠さなかった。
最初のコメントを投稿しよう!