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一.
大学で機械工学を学び、尊敬する先輩を追って入ったのは、デジカメを主力製品とする某映像機器メーカーだった。
しかし十年も経った頃、世にあっという間に普及したスマホによって、ただカメラでしか無いデジカメの必要性は急速に薄れ行き、
「そろそろ潮時だな」
そう言って先輩が、外資系の大手電機メーカーのスマホ開発部門へと転職を決めたのをきっかけに、技術部の半数近くが一斉に各々の新天地を求めて離職するという「事件」が起きた。
人付き合いの上手い先輩は、日頃から他の企業の人たちとも上手く繋がり、常にこの時の準備をしていたのだと思う。
しかし僕はできれば一箇所でずっと腰を据えて頑張りたいタイプの人間であり、
「お前も来るか?なんとか枠を用意してもらえるよう掛け合うこともできるぞ?」
と言う先輩の誘いにも違和感を覚えてしまい、
「はぁ……いずれお願いするかも知れないです……」
などと曖昧な返事をして結論を濁した。
その後、会社の上役が、
「お前は辞めないよな?なぁ!?」
と残った社員一人一人に、涙を浮かべ必死の形相で声を掛けて回り、僕の所にも現れたが、
「はぁ……できることなら……」
先行きの不安も確かに覚えてはいたため、僕はこちらにも曖昧に苦笑いを浮かべつつ、翌日、休職願いを出した。
この先、自分がどうすべきか、何をしたらいいのか、少し頭を整理したかった。
そして僕は、随分久し振りに、実家の島に帰った。
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