笑うなキケン!

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笑うなキケン!

 某感染症の対策のため、現在社員の殆どが交代でテレワークとなっている。我が社も然り。最初は社長だけは常に会社に出社すると言っていたのだが、業務の関係上それも難しいということで、今日は社長は家、課長と社員一名が会社にいるという状況になっている。  なんせ我が社は地元密着型の小さな企業。オフィスもちっちゃい。これ以上の人数が集まると密になりかねないからだ。  結果、重要な会議は例のごとくオンライン会議となる。それはいい。  問題は。その中に多数、素晴らしき問題児が混じっているということである。 『あー……もうすぐ会議の時間なのだが……』  基本的に会議はチャット形式で行われる。司会進行役の課長だけテレビ通話で、それ以外のメンバーはそれを聞きながら随時文字を打って質問などをしていくという形式を取ったのだ。全員テレビ通話にしなかった最大の理由が、わが社の脆弱すぎるインターネットとボロすぎるパソコンが重たい多人数でのテレビ通話に耐えられないかもしれないというのもあった。  なんといっても、わが社のパソコン、恐怖のWindow XPである。7でさえサポート終了してるのにXPて。セキュリティは大丈夫なのか、というツッコミはしてはいけない。わが社はビンボーである。  で、そういうわけで俺のパソコンの画面には、チャットと困り果てた課長の顔が映し出されているわけだが。 『すまない、塚地。現在、参加予定メンバーの大半……というか私達以外全員が遅刻している。もうちょっと待って欲しい』 『いないのは社長と、係長と、坂田さんと、宇津木さんと、佐藤さんと、田中さんですよね……遅刻多すぎやしませんか。課長、理由聞いてます?』 『社長は自宅パソコンの電源ボタンの場所からわからなくて、現在係長に電話でレクチャーされてる真っ最中だ。係長はそのお世話のために遅刻していると連絡が入った。坂田さんは猫に邪魔されてパソコンが封印されている状態、宇津木さんは真夜中までネトゲして寝坊して遅刻、佐藤さんは突然オンライン会議して家が映る可能性があると言った結果“こんな片付いてない部屋を映さないで!”と奥さんに激怒されて現在お説教されている真っ最中、田中さんも同じく奥さんの怒りを買って部屋を急いで片づけてるからちょっと待っててとのことだ……』 『ツッコミどころ多すぎやしませんか』 『奇遇だな、私もそう思う』  なんかどれも、ありありと思い浮かんで困る事案である。確かに、一応チャットメインでの会議になるとはいえ、サボリ防止のためテレビ通話に切り替えることも想定しておくようにとは言われていた。そりゃ、家が映るかもしれないのに部屋の片づけが終わってなかったら家族は怒るだろう。  ネトゲと猫もまあ言いたいことはあるが(猫ってなんで仕事で使う時に限ってキーボードの上に来るんだろうか)、一番モノ申したいのは社長である。あの、仮にも社長なのになんで自宅のパソコンの電源ボタンの場所からわからないなんてことになるんだろうか。やり方を電話だけで教えるって係長、ものすごいハードモードを強いられているような。家も遠くないし、ヘタしたら社長の家に乗り込んでいって教えなくてはいけなくなるのではないか。  俺と課長で深くため息をつきつつ、こっそり電話でだらしない社員達の愚痴を言い合って約一時間。そう、一時間かかってようやくメンバーの殆どが、会議用のソフトウェアにログインすることに成功したのである。
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