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「そんな……それじゃ結局これは動かないってこと? 私のやってたことは……無意味?」
まずい。彼女が絶望してしまった。
このままではこんな機体いらないとか言い出して壊しかねない。いや、最悪、それすらせずにどこかへ行って帰って来なくなるかもしれん。
そんなことされたら本当に気が狂ってしまう。なんとかしてやる気を出してもらわねば。
『いや、逆に考えればだ!
パイロット権限さえあれば君はこれに乗れるってことだろ!?』
「……それができてたら最初からやってるわよ」
『なんでできなかったんだ?』
「そのための項目はどれだけ探しても見つからなかったから」
なるほど、彼女はおそらく最初にパイロット登録をしようとしたが、どこからやればいいのかわからなかった。
だから、システムに直接アクセスしてハッキングできないかと色々いじってた訳だ。
『うーん……パイロット登録の方法かぁ……』
俺だってこの身体になってからまだ全然時間を経てない。もしかしたら彼女の方が詳しいまである。
だが、パイロット登録の方法について考えていたら、頭の奥の方から何か色々と『考え』が浮かんできた。
もしかして、これって俺という『システム』の項目が何かか?
いよいよ自分がコンピューターみたいなものになってきてる気がして寒気を覚えることはできなかったが嫌な感じはした。
ともあれ、この中にそれらしきものは……あった!
『おい!あったぞ!これならパイロット登録できるかもだ!』
「本当!?」
お、わかりやすく眼を輝かせて食いついてきやがったな。よしよし現金なやつめ。
俺は見つけた『考え』を彼女に話す。
『必要なのは、肉体と魂だそうだ』
「……ちょっと何言ってるかわからない」
『うん、俺もそう思う』
再び彼女の瞳が光を失い始める。
まてまて、もう少し詳しくだな……
『えーっと……契約の主となる俺に、パイロット、つまり契約者となる君の肉体の情報を捧げ、魂の証となる真名を互いに交換する。』
「肉体の情報を捧げる?」
『要は……生体認証を登録しろってことかな?』
「それはどうやるの?」
『えーっと……うーん……あっ、これだ。その椅子にもっと深く座ってくれ。』
「こう?」
彼女が椅子にしっかりと深く座ったのを確認すると、俺は椅子に意識を集中させた。
椅子から彼女へ、彼女から椅子へ、そして椅子から俺へと情報が流れていく刺激を覚える。
すると、俺の中に彼女の情報が流れてきた。
『なるほどなるほど……
年齢は815万5075分。つまり15歳と6ヶ月ってとこか。
現在は身長148cm。体重42kg? おいおいもうちょっと太らないと弱っちまうぞ?』
「う、うっさいわね! てかそんなことまで見てるの!?」
『おいおい動くなよまだ読み込み中なんだぞ?』
「くっ……」
そこからどんどん彼女の情報を吸い上げていく。
持病は今の所なし、骨や筋肉の構造もごく普通。やや栄養不足気味。虫歯になりかけてる歯が数本ある。etc……
彼女の情報を吸い上げるほどに俺の中で彼女の肉体のイメージが構築されていき、目の前に完璧な彼女の姿が映し出された。
って! 俺の吸い上げた情報だけで構築したイメージは彼女の肉体『のみ』。つまり素っ裸になっちまう! ストップ! ストーップ!!
……うん、やっぱもうちょっと太った方がいいと思うよ君。
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