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第一章 夕刻と蝉時雨
日が沈み、蝉も静かなる頃。俺達十人は廃校の前に集まった。夏もまだ中旬だというのに少し肌寒く、メンバーの中には長袖の奴もいた。
何故俺達がこんな時間にこんな所で集まっているのか。
それは......
ーーー遡ること二時間前ーーー
「どした?」
俺は電話の向こうにいるであろう人物"玄野 翔"と会話...いや、キャッチボールすら出来ていないかもしれないがそれに似たようなことをする。
「あのさ優人...英語の課題って、どっからだっけ?」
「また、授業きいてないんかよ?」
「いや、あの授業で寝るなと言うほうがおかしいだろ」
確かにうちの高校の英語の先生は、中学、高校とコーラス部に所属していた(と、最初の自己紹介で言っていた。)らしく、とても美声なのだが...睡魔と仲が良いのだろう。数分後にはクラスメイトの大半が夢の中だ。それでも俺は起きているのだが.........。
「そっちに、なんかメモするやつある?」
翔にそう聞くと「メモ帳がある」と答えたので、課題の範囲を伝える。
「ワークの27~41ページと.......」
「ちょっと待って」
「次はなんだよ?」
俺の問いに、翔は重々しく答える。
「......あのさ、とんでもないことに気づいた」
「だから、なんだよ?早く言えって」
「.........ペンがない」
俺が「早くとりにいけ」と、翔に言ったのは言うまでもないだろう。その後、無事(?)に課題の範囲を把握できた翔はなにか思い出したように口を開いた。
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