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(9) やっぱりムンムン
服を整えソファに座り直す3人。
鬼塚と一ノ瀬は並んで座り、藤崎は対面に座った。
一ノ瀬は鬼塚の片腕にぴったりと体をよせ、すでに恋人になった気分である。
先ほどの熱気は既に覚め、何か重苦しい雰囲気が立ち込める。
鬼塚は、藤崎がむすっとしているのが気になって仕方がない。
(どうして、会長は怒っているのだろうか?)
不思議がる鬼塚。
確かにいかせることは出来なかった。
が、それはお互い様である。
それに、あの二人の気持ちが重なった恋人のように通じ合う感覚。
いつもの快楽任せのセックスとは全く違っていた。
ちなみに、藤崎は、怒っている訳ではない。
今まさに目の前で起こっていること。
一ノ瀬が人目を憚る事なく鬼塚にベタベタしているのがうらやましくてしかたないのだ。
(鬼塚君は、そういうの嫌いと思って我慢していたのに……)
唇を噛む。
そうなのだ。藤崎は、大の甘えん坊。
だから、鬼塚に触れていたいし、くっついていたい。
しかし、鬼塚はきっとそういうのは嫌いなのだと思い遠慮をしていたという訳なのだ。
それを一ノ瀬がいとも簡単に打ち破りイチャイチャする姿を見て衝撃を受けたのだ。
鬼塚を見ると、別段嫌そうな顔をしていない。
自分だって!
そう思って歯ぎしりをする。
鬼塚は、そんな藤崎の真剣な顔が怒っているように見えているのだ。
(なにか、ガチで怒らせてしまった……ああぁ、でも、こんな怒り顔の会長の顔、超萌える……)
せっかく純粋さを取り戻していた鬼塚だが、さっそくドS心が顔を出していた。
いつもの鬼塚。
ただ、鬼塚にしても、せっかくのいいところで邪魔が入り悶々としているのは事実。
今も、ズボンの中では所狭しと勃起したペニスがいきりたっている。
早いところ、一ノ瀬を追い出し、藤崎と繋がりたい。
さっきの続きをして、よがる藤崎を見たい。
そして、その熱くたぎる白い液を余す事なく藤崎のアナルの中に吐き出したい。
そう思っているのだ。
(ところで、一ノ瀬は、なんで俺にベタベタしてくるんだ?)
それも鬼塚にとっては謎である。
一ノ瀬にとっての鬼塚は、自分の初めてを捧げ、メスイキを味合わせてもらい、念願の女の子に変貌させてくれた男なのだ。
完全に鬼塚に惚れてしまっている。
しかし、鬼塚からすると、藤崎から引きはがすため、そして、生徒会から追い出すために嫌がらせのつもりで犯しただけなのだ。
恨みこそあれ、好かれるなんて、露の程にも思っていない。
(変わったやつだ……ま、まさか、こいつ、ドMってやつか?)
いや、普通の恋するオトコの娘である。
(まぁ、一ノ瀬を会長から引き離すことには成功した訳だが……)
鬼塚としては結果オーライではある。
(しかし、何故、会長は怒って……)
鬼塚は、ふと、藤崎の目線で気が付いた。
一ノ瀬を見ているのだ。
(ま、まさか……)
鬼塚はピンと来た。
(分かったぞ! 一ノ瀬が俺にくっつくものだから、癪に触っている。そうだよな、あれだけ自分に懐いた舎弟のようだったのだ。そいつを結果的に俺が奪ったって事と同じだ。悔しがるのも無理はない……そういう事か)
腕組をしながら、うんうんと頷く鬼塚。
やがて、ある考えが頭に浮かぶ。
(まてよ! こいつは、上手い事いきそうだぞ)
再び鬼塚の頭のドS計算機がパチパチとなりだす。
(つまり、一ノ瀬というオモチャを、会長に与えては奪い、与えては奪いを繰り返す。そうすれば、その度に会長は悔しがって、今見たいな悔し顔の萌え顔をするって寸法だ。うほっ! 最高じゃないか!)
鬼塚は、静かに目を開ける。
そして、藤崎に声を掛けた。
「会長。会長の気持ち、よく分かりました」
藤崎は、ピクンとした。
顔を見上げる。
(ボクの気持ち……分かってくれたの? 鬼塚君。ボク、今鬼塚君に甘えたくて仕方ないんだ!)
「ほ、本当?」
「はい。じゃあ、一ノ瀬。お前は、そっちに座れ」
「えっ? どうして?」
不思議がる一ノ瀬。
鬼塚の顔を見上げる。
「どうしてもだ!」
鬼塚は、ぴしゃりと言った。
一ノ瀬は渋々、「はい……」と言うと、藤崎の横に座った。
大好きな彼の言葉なのだから仕方がない。
それに、一ノ瀬にしても、藤崎への敬愛の念は元通りに戻っていた。
結局、一ノ瀬が想像した通り、藤崎は女の子になりたかった。という事実が分かったからだ。
もちろん、それはフェイクなのだがそれに気づく術はない。
鬼塚は、藤崎の方に向いて言った。
「会長。これでいいでしょ?」
(これで一ノ瀬の引き渡しは完了。さて、あとは頃合いを見計らって、また一ノ瀬を奪えばいい。よく分からんがまた無理矢理犯してしまえばいいのだろう。ドMってのはそいうものなんだろう。うん、良く分からんが……)
一方、藤崎である。
(もしかして、自分の番!? 鬼塚君にイチャイチャしていいの!?)
藤崎は、ぱあっと顔を明るくする。
そして、席をサッと立つと鬼塚の横に行って飛びついた。
鬼塚の腕に顔をスリスリと擦り付け、満面の笑みで鬼塚の匂いを堪能する。
「ん!?」
鬼塚は、何が起こったか理解できていない。
(そんなに嬉しいのか? 一ノ瀬を返してやったことが?)
ここまで鈍感であると、まさにアホである。
一方、一ノ瀬は、その藤崎の姿に驚き、
「あ、あたしも!」
と、鬼塚の反対の腕に飛びつく。
(ふふふ。何だ、鬼塚君ってこうやってベタベタしても大丈夫なんだ。ユタカ君のおかげで分かっちゃった。幸せ!)
(ヒヤヒヤしたぜ。会長の機嫌が良くなって助かった。でも、よく分かったぜ。一ノ瀬をこんなに大事に思っているんだな。こりゃ一ノ瀬をダシにしてもっともっと虐めてやる。うひひ)
(もう! 鬼塚先輩! 会長にまで優しすぎます! でも、先輩はあたしにぞっこんなんだ。だから、許して上げる。ダーリン! ふふふ)
三者三様ににやにやし始める。
そこへ、林田が生徒会室へ入って来た。
「あれ? 会長に一ノ瀬君、どうしたんです? 副会長にコアラのようにしがみついて?」
藤崎も一ノ瀬も林田の方をチラリと見ただけ。
頬を紅潮させて幸せを満喫している。
林田は、首を傾げた。
「変なの……」
林田はそう言って、ポンと手を叩いた。
「あっ、オレいい事思いついたっス! 今度の写真は、百合展開を邪魔するモブ男子ってどうですか? 結局、モブ男子に二人の仲は引き裂かれてエッチな展開に……うはっ、ヤベェ、オレ、想像したら、また勃起しちゃいましたよ。ははは」
ご機嫌な林田は股間を突き出して、ズボンの膨らみをアピールする。
しらっと無反応な3人。
それもそのはず、既に3人は妄想の中にいた。
そこではそれぞれ想いの人とムフフな展開に……。
当然、それぞれの股間のものは既にフル勃起状態。
(ああん……鬼塚君。もうエッチなんだから! 優しくして!)
(おらおら! いやらしい顔してますよ、会長、ひひひ)
(ダーリン! もっともっと奥まで! 大好き!)
そんな恋する男達が集う生徒会室では今日もムンムンとした空気で満たされるのだった。
※ ムンムン生徒会 ~女装子ライバル出現!むっつりドS君、大ピンチ!?の巻~ 終わり
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