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猫になった。理由は分からない。
気がつくと私の体は猫になっていて、前足を揃え、姿勢を正して座っていた。
顎を引いて、下を見る。ふかふか白い胸の毛。腕は鯖柄。その模様は背中まで続いていることを確認して、ついでに毛繕いもした。うん。猫の仕草だわ、これ。
そして右手を舐めて顔も綺麗にしながら、ぼんやり思った。
これ、エルの身体じゃない?
エルはお隣に住む大木井家の猫で、洋猫だとかでとにかくデカい。近所の野良猫の倍は確実にある。そんじょそこらのお座敷犬なんてあっという間にのされてしまう迫力だ。
そんな大木井エルさんは飼い主の長男である昴のことが大好きで、同じく昴のことが大好きな私と取り合いの喧嘩をしょっちゅうしていた。
人間なのに! 私、人間なのに猫と男を取り合いですよ! どういうこと⁈
が、まあいい。
昴は小さい頃から生きとし生けるもの全てを愛す博愛主義者で、私はそんな彼のことが小さい頃からとても好きだった。
そしてエルは大木井家のペットとして君臨し、そこでちょっと勘違いした訳だ。
自分は実は人間なんじゃね?
ってのと、
昴、私のこと好きなんじゃね?
ってのの2つ。
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