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さあそこで、私とエルとで種族を超えた愛の闘争が始まるんだけど、まあいいや。今は割愛。今はそんな思い出に浸っている場合じゃない。
なぜって、ほら、エルがいるってことは、ここは大木井家の中なんですよ。ドキドキ。
昴の部屋に、忍び込むチャーンス!
エルである立場を利用して、足元にスリゴロして、憧れの全身撫でくりをしてもらうのよ!
なんて決心して、つい興奮して尻尾の毛がふわっと立ったら、廊下の先でガチャリと扉が開く音がした。急に湿気で重くなる身体。扉の向こうから漂う、石鹸と湯気の匂い。
「あっちーい」
そう言って昴が扉の向こうから現れた。
タオルで頭をがしがし拭いて、拭いて、拭いてって、あんた真っ裸じゃないのー⁈
「ミャー!」
「お。どうした? 俺の出待ち?」
人の気も知らず、昴がのほほんと笑ってしゃがみ込む。
「エルは可愛いなぁ」
そう言っておでこをくしゅくしゅって撫でるから、私は思わず目を細めて、ナーンと鳴いた。
が、良くない。これは、良くない。
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