第1話 アキ、アイドルになる

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第1話 アキ、アイドルになる

「アキさん、お疲れさまでした。どうでした?劇団『アンデルセン』は」 「一週間の舞台、ずっと興奮しっぱなしでした!」 遡ること1ヶ月余り前、私はここ『シオタ派遣プロダクション』に正式に就職した。それまでいろいろあって、一旦はここを飛び出したものの結局は戻って来ることになった。 そして、最初の仕事を今終えて帰って来たのだ。 劇団『アンデルセン』は少年少女のための劇団で、童話や小学生が読む本などを演目にしている。私が今回派遣されて演じたのは『若草物語』のマーチ役。四姉妹の母親の役だ。とても賢く優しい母親。 急にマーチ役だった人が家の都合で出演できなくなり要請があったのだ。 本番までは20日程しかなく短かったが、それも派遣の宿命だと思い、集中して稽古した。 『アンデルセン』の団員はみんな明るい人たちで楽しかった。小さなホールで観客は100人程度だったが、緊張や終わった後の達成感と興奮で初日は眠れなかったほどだ。 私は一週間やり終え、今はマーチになっていた。 「さっき、『アンデルセン』の座長から電話ありましたよ。アキさんの演技を絶賛していました。また、次もお願いしますと」 「次って演目は何ですか?私の役は?!」 私が喰い気味に聞くと、シオタはため息をついた。 「アキさん、次も、っていうのは社交辞令です。アキさんの演技が良かったのはお世辞じゃないとは思いますが……。何せ、がないみたいです……」 「ん?それって……もしかして……」 ダジャレなの?! 私は思わず、失笑してしまった。 「アキさん、本当に空きがないんです。劇団に欠員ってなかなか出ないもんなんですよ」 あ、そういうことなのね。ダジャレを言ったつもりのないシオタは私の失笑にちょっと気を悪くしたようだ。 「私だって、ダジャレぐらい言うわよ。とにかく、暫く自宅待機していてください。仕事が入ったら連絡します」 シオタは前回の事件以降、口調が少しフランクになっていた。 でも、仕事がないとは……。 「ここもね、以前は劇団だったのよ。20人ぐらい団員がいて賑やかだったわ。この事務所も2階にあって、このフロアは全てレッスンに使っていたのよ。でも採算ギリギリでやっていたのに加えて、団員が芸能事務所に行ったり辞めたりとかで、もう舞台もできなくなってしまって。それで派遣業に変えたの。でも、こんな状態じゃ、今からどうやっていくか考えないと……」
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