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それから、一週間後のある日、シオタから出勤するよう連絡が入った。
私は次の仕事を勝手に想像しながら、事務所に向かった。
「おはようございます!次はどこの劇団ですか?」
今日は珍しくレンさんもマリリンもいる。
劇団『アンデルセン』で派遣されている間はふたりと会う機会がぐっと減っていた。
レンさんには私が復帰したあの時、自分の心無い言葉でレンさんを傷つけてしまったことを謝った。もちろん、レンさんは私を笑顔で迎えてくれたし、私が言った言葉そのものは気にしていないと言ってくれた。ただ、仏壇に線香をあげたいと言われ、その日の帰りはレンさんの車で帰途に着いたのだ。
レンさんは線香をあげた後、長い間、手を合わせていた。母に謝っているのか、何を思っているのかまでは聞いてはいけない気がした。
「アキさん、次の仕事はこれよ」
シオタが差し出したのは、記憶に新しい一枚のカード。確か、ここを飛び出した時に落としたんだっけ。
「えっ?これって……」
「あ、ごめんなさいね。新しいのを作る暇がなくて、前のカードの上にシールを貼っただけの物になってしまって」
「そこじゃなくて……」
シオタの天然な切り返しに、私が突っ込むとマリリンもクスクスと笑っているが、これは笑い事じゃない。
「これ、ミッションカードじゃないですか?」
「そうよ。だから、前みたいに身代わりの仕事が入ったの」
平然と言うシオタに私は唖然となったが、即座に反論した。
「私は『ミガワリ』じゃなくて、『シオタ派遣プロダクション』に就職したんですよ」
私の反論にシオタは悲しそうな表情になって
「お願いです。どうか、ここを助けると思って」
と懇願した。
「それに、マリリンの苦労もあるのよ」
「マリリン、また手相占いをやったの?!」
「今回は水晶占いですけど。手相占いは本業の人から苦情があって、できなくなってたんです。で、短期間で水晶占いをマスターして」
私が劇団に行ってる間、マリリンは何をしているのかと思っていたけど、そんなことを……。
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