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目の前には、何か大きな木箱が置いてある。
なんだろう?
虎はただ黙って、そこに伏せたまま。
俺は、その蓋をそっと開けてみた。
ちょうつがいで繋がったその蓋を開けると、微かな光でも輝く金銀や宝石が山のように入っている。
うそ!?
こんなの初めて見た。
俺はキラキラ輝く透明な石を一粒手に取ってつまみ上げる。
遠くの光を受けてキラリと輝くそれは……
もしかして、これ、ダイヤモンド?
本物なんて、初めて見た。
「虎さん、これ、もらっていいの?」
俺は虎に尋ねる。
虎は、素知らぬ顔でただそこに伏せている。
「ダメって言わないんだから、いいのかな?」
俺は、ダイヤを一粒だけポケットに入れた。
全部を持って帰るのは無理だもん。
たくさん持ってたら、この湖を渡る前に沈んじゃう。
その時、ふと箱の蓋を見ると、内側に見覚えのある地図を見つけた。
「これ……」
俺は、さっきしまった地図をリュックから取り出した。
広げて並べてみる。
同じだ!
持っていた地図の赤いところに触れ、比べるように箱に貼ってある地図の赤いところに触れた。
その時、また地面が大きく揺れた。
えっ!?
いってぇ……
気づくと、俺はお社の賽銭箱と格子戸の間で横になっていた。
あれ?
なんで……
状況がよく飲み込めない。
俺は、腰をさすりながら、ゆっくりと立ち上がる。
石段を下りて、空を眺めると、お日様は真上に来ていた。
あれ?
お昼?
その時、
「おい、塁! 何してたんだよ! ずっと公園で待ってたんだぞ」
大きな声で名前を呼ばれて驚いた。
そこには、今日遊ぶ約束をしていた友人3人の姿があった。
「あ、ごめん、ごめん」
俺は、よく分からないまま、謝った。
あれは、夢だったのかな?
ただ半日、あそこで眠ってただけ?
よく分からないまま、みんなと帰ろうとして、違和感に気づいた。
「塁、なんで足、そんなに濡れてるんだよ!」
俺のズボンは膝下がぐっしょりと濡れていた。
やっぱり夢じゃなかった?
でも、なんて説明していいか分からない。
「さっきそこの池にはまって……」
俺は、神社の横にある池を指さした。
「げっ、マジか! 鈍臭いなぁ」
3人はケラケラと笑う。
ま、そうだよな。
俺だって、池にはまったなんて聞いたら、笑うもん。
俺は、3人と連れ立ってそれぞれ家路に就いた。
家に着くと母さんに散々呆れられ、叱られ、着替える羽目になった。
けれど、ズボンを抜ごうとしたその時、硬いものが手に触れた。
ポケットを探って出てきたのは、朝、突っ込んだせんべいではなく、キラキラ輝くダイヤモンドだった。
やっぱり、本当だったんだ!
俺は、パンツのまま二階へと駆け上がり、それを机の引き出しへとしまった。
この日の不思議な思い出とともに。
このダイヤが、20年後、誰の指を飾ることになるのかは、また別のお話。
─── Fin. ───
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