Side カイン

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Side カイン

もうすぐキミに会う時間だ。 俺は白衣を脱ぎ、身なりを整えモニターの前に座る。 数回のコールの後、モニターに映し出されるキミの笑顔。 「やぁ、今日は何か楽しい事はあったかい?」 こんな言葉から今日のオンラインデートは始まった。 キミははにかみながら「カインと話してる今が一番楽しいよ」と言って笑った。 他愛もないやりとりだけど、俺にはキミとの会話は全てが嬉しくて楽しいんだ。 キミとこうやってオンラインで会えるのは時間が決まっていて、短過ぎてまったく足りない。もっとずっと―――一日中でも繋がっていたい。 俺はモニター越しに恋人、ルクスを見つめ微笑んだ。 キミは最初は俺の事を見ているのか見ていないのかわからない状態だった。 段々と俺の事を『カイン』として個別に認識してくれるようになって、キミが俺の事を好きだと言ってくれた時、キミが俺に微笑みかけてくれた時、俺はキミしかいらないって思えるほどキミにのめり込んでしまった。 俺には当時、結婚間近の婚約者がいた。 だけど、キミ以外いらなくて、キミとの未来しか考えられなくて、キミと俺の仲を引き裂こうとするから、俺は婚約者を捨てた。 婚約者には泣かれなじられ親からは見放され、研究者仲間にも気が狂ったのかと言われたよ。 だけど俺はキミがいいんだからしょうがない。 たとえキミと実際に触れ合う事ができなくても、キミとこうして話ができるだけで俺は幸せだ。 俺は微笑むキミを見つめながらキーボードを叩きプログラムを走らせる。 一瞬だけ固まったキミがすぐに俺の大好きな笑顔で微笑む。 キミを蝕む(バグ)は俺が退治してあげるから安心して。 さぁ今日はどんなキミを見せてくれるんだい? 「カインもバカだよな。あんないい子捨ててAIなんかに本気になるなんて――」 後ろで他の研究者たちがそんな事を話しているのが聞こえる。 だけど俺には、俺たちには関係のない事だった。 キミさえいれば俺は他の事はどうでもいいのだから。 俺たちの今日のオンラインデートは始まったばかりだ。 ―――ルクス、俺の心を掴んで離さない愛おしいAI(ひと)。 -終-
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