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1話
カンッ、カンッ
ヒュッ
剣と剣が交わる音と空を切る音が
途切れることなく聞こえる。
人気のない森の中、
少し開けた場所で、
少年と青年が剣術の稽古をしている。
かすり傷を沢山つけた少年は
何度も何度も青年に立ち向かっている。
一方、
青年はまるで猫の馴れ合いを見るかのように、
微笑みながらその攻撃をかわしている。
「全く....君は諦めが悪いですねぇ...」
「うるっせぇっ....!!!!」
歯を食いしばりながら何度も剣を振るう少年。
「んー....もうお腹もすきましたし、
ここいらで終わりにしましょうかね....」
そう言い、にこっと微笑むと、
今まで1度も振っていない剣を構え、
少年の剣をものの数秒で少年の手から弾き飛ばした。
そして丸腰になった少年の首元にゆっくりと
剣先を沿わせた。
「くっそぉっ!!!!」
少年は息を乱しながら、悔しそうに顔を歪めた。
「はははっ
まだまだですねぇ、カイ
お腹がすいたので帰りましょうか」
「ちっ」
にこにことして家の中に行く青年とは反対に
少年はイライラしながら
弾き飛ばされた剣を拾いに行った。
「おや?」
ふと青年が空を見上げた。
飛んで来たのは伝書鳩だった。
右腕を前に出して伝書鳩をとまらせた。
「国王陛下からのお手紙でございます
北の聖騎士アース様」
羽を広げ恭しく礼をし、
器用に嘴で手紙を差し出した。
「....これは....」
「先生ー!!
昼食が出来ました!!」
家の中からカイの1つ下の2番弟子
リーシャが鍋つかみを両手に嵌めながら私達を呼ぶ。
「わかりました、ありがとう伝書鳩くん
おーい! カイ、昼食にしましょう!!」
ムスッとした顔でカイは歩いてきた。
そんな彼が可愛らしくてつい笑みをこぼす。
━━こんな日々が続いてほしい
そんな淡い期待を手紙にも託した。
叶うはずがないとわかっていながら。
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