null(ヌル)

4/4
前へ
/4ページ
次へ
 もしも日が暮れたのなら、少年は足を止めただろう。  それに道や川で畑が途切れていても、少年は足を止めただろう。  さらに誰かが少年を見つけて戻るように言ったのなら、少年は喜んで足を止めただろう。  しかしどれも起こらなかった。きっかけがなければ、足は止まらない。終わりがなければ、永遠が続く。  少年が村に戻ることは、二度となかった。 ☆☆☆  このような伝承は世界各地にあります。  日本での神隠しの伝承にはじまり、近年の事例ではフィラデルフィア実験やサンチアゴ航空513便事件などが有名です。  時間と空間は常に同一にあるとは限らない。  時間と空間、どちらか一方がなくなったとき、人はどうなってしまうのでしょうか。  そんなこと怖いから考えたくないと思う人も多いでしょう。しかし私はそこに不死から諷示(ふうじ)が見えて、聊かの興味があるのです。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加