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第1話 飼い主さんが帰ってこないにゃ…①
「飼い主さんが帰ってこない…おかしいにゃ?」
飼い主の朋美がずっと帰ってこない…。寂しくて堪らなくなった俺は、外へ探しに行くことにした。
少しだけ空いている窓。その隙間に手を入れて体で抉じ開け、素早く庭に降りる。
「母さん! 朋美の猫がまた脱走したぞ」
ところが朋美のお父さんに、すぐに捕まえられてしまった。チッ…。
「母さん! 足が泥だらけだ拭かないと家の中に入れられないよ」
「はい、お父さんタオル!」
お父さんが叫ぶと、家の中から朋美のお母さんが走ってきて、俺をグリグリとタオルで拭く。
「困ったわね…毎日すべての部屋を探し回っては外に飛び出すのよ…」
「この家を売って俺たち夫婦はもうじき老人ホームに入る予定だし、母さん…朋美の猫どうしようか?」
朋美の両親は悲し気な顔で、困ったように今日も俺を見る。
「にゃっにゃっにゃー!」
俺は必至で『何処に行ったの? どうすれば朋美に会えるの?』と朋美のお母さんの足を、手でポンポンと叩いた。
「可哀そうに、朋美はもうこの家には帰ってこないのよ…探してもいないのよ」
だが朋美のお母さんは悲し気に微笑むだけで、それ以上は答えてくれなかった。
記憶の最初にある顔は、飼い主の朋美の顔だ。俺にとって朋美は、飼い主であるのと同時に親猫のような大好きな存在。
俺はアパートで朋美と一緒に暮らしていた。だが「実家に帰るんだよ」と言われ、長時間キャリーケースに入れられ、朋美の両親のこの家での暮らしが始まった。だがしばらくすると、「少し留守にするけど必ず帰ってくるからね」そう言って朋美が何処かに行ってしまったのだ…。
『可哀そうなんかじゃないよ、俺には朋美がいるもん! 帰ってくるって約束したにゃ!』
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