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第2話 飼い主さんが帰ってこないにゃ…②
だが待てど暮らせど朋美は帰ってこない…。家の中にあった朋美の臭いが日に日に薄くなっていく。俺は朋美のパーカーを寝床まで引きずって持っていき、包まって寂しさを紛らわしていた…。
この頃から、知らない人間が家にやって来ては、俺をジロジロ見て帰っていく、そんなことが何度か続いた。
興味がないので無視していたが、その人間の一人が突然、俺のほうに手を伸ばしてきた。朋美のパーカーを取り上げられる!?と思った俺は、フ―!と威嚇しその手を引っ掻いてしまった。
「こんな調子じゃ、新しい飼い主に懐かないでしょうね…」
朋美のお母さんが、俺を見て心配そうに溜息をつく。
「なぁ母さん、考えたんだが、佳菜江ちゃんに飼ってもらったらどうだろうか?」
「佳菜江ちゃん、猫好きかしら?」
「この猫は朋美以外には懐かん気がする、赤の他人の里親さんにもらわれていっても幸せにはなれんだろ…」
朋美の両親は俺を心配そうに見つめながら、何やらヒソヒソと相談をしている。
『朋美に会いたいにゃ…、早く帰ってきて朋美! そうじゃないと俺…他の人にあげられちゃうよ~!?』
俺は不安で涙目になりながら、一晩中、鳴き続けた。
◇◇◇
週末。俺は起き上がる気力もないまま、餌も食べずに朋美のパーカーに包まって丸くなっていた。
すると、不意に玄関を開ける音がして、「こんにちは~!」と声が聞こえてくる。
『朋美!?』
その声を聞いて、俺は飛び起きた。
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