平行線

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 女が目を閉じて深呼吸をすると、雨上がりの澄んだ空気いっぱいにバラの香りがした。  本当!気がつかなかったわ!  男はにっこりと笑った。その横顔は、映画スターのようにハンサムだった。男は車椅子を引いて、並木道まで戻った。  男は言った。  行きたいところがあったら言ってください。連れて行きますよ。  女も言った。  あなたも、行きたいところがあったら言ってね。私が探すから。  バラの香りの漂う朝の光の中で、突然ふたりの世界は大きく広がった。ふたりは公園をゆっくりと散歩した。  雨上がりの濡れたタイルに、ほっそりとした二本の平行線と、しっかりとした足あとが続いていた。まっすぐに、どこまでも・・・。 ~Fin~
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