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15分も経った頃、男がひとり並木道をやってくるのが見えた。背が高いその男は、まるで映画スターのようにサングラスをかけていた。女は助けを求めて声を出しかけて、気がついた。男の手には白い杖があったのだ。女は躊躇ったが、公園には他に誰ひとりいない。これ以上この不安定な姿勢でいるのは辛かった。
すみません・・・
女が声をかけると、男は立ち止まった。キョロキョロとあたりを見回すことはなく、少しうつむいてじっと耳を澄ましているようだった。女はもう一度声をかけた。
すみません!
ぼく?
ええ、あなたに。
どうしました?
女は事情を説明した。女の声に導かれて、男はバラのアーチの下にやってきた。男が手を伸ばし、女はその大きな手を取った。男は車椅子の肘のせを握ると、軽々と前輪を持ち上げた。女は礼を言った。
バラを見ていたのですね、と男は言った。だが、男には見えないはずだ。
どうしてバラだと?
だって、こんなに花の香りがしますから、男は笑って答えた。
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