2人が本棚に入れています
本棚に追加
「つかまえたー! つかまえたー! 人間の臭いがする女を捕まえたー!」
吸い込まれた私の目の前にいたのは真っ赤な体をして頭に二本の角を生やした小柄な二匹の鬼……だった。
「人間の肉って上手いってきくもんな! ……げへへ、早く食べてみたいぜ」
普通なら着ぐるみを着てドッキリなりお遊びだと思う……けど、私の目の前の二匹の口は明らかに動き言葉を発しているし、口の中には二本の刃が生えていた、こちらを見ている眼も人の物ではないと体が心が言っているような気がした。
「え……ぁ……」
「まぁいいや、早速千切って味見を」
そう言って反対の手に持っていた包丁のような物を構えた直後、どこからか男の人の声が聞こえた。
「おいおい鬼ども、その子は人間じゃないぜ?」
「ん? ぁ? おぉ、祟りじゃん! え? この女、どうみても人間だろ? 何言ってんだよ」
「その子は人間に見えるが、妖怪座敷童子だ、俺が言うんだから間違いねぇよ」
「ざしきわらしぃ? それってガキの妖怪だろ? この女はどうみても、なぁ?」
「なぁ?!」
小柄な二匹の鬼は互いの顔を見てそう言うと私をじっと見つめてくる。
それに対し私は目線を逸らす。
「お前らぁ……最近の座敷童子はなぁ子供ばかりがなる妖怪じゃなくてそれぐらいの子もなるのさ、それも知らないで良く小鬼を名乗れるな?」
その言葉に小鬼と呼ばれた二匹の鬼の互いの顔を見て困ったような顔をすると言われた相手を見て誤魔化すような顔をすると逃げるようにその場を去って行った。
その後、その場に座り込んでいる私の目の前にしゃがみ込んだ人を見る。
「眼帯……?」
「……そんなことより、なんで人間のお嬢ちゃんがこんなところにいるんだ? ここは妖怪達が集まる街と呼ばれている秘境だぜ?」
「えっと……その……」
理由を説明できない私に対し呆れる顔もせず笑顔を浮かべる片目を眼帯で隠した男の人は立ち上がり私に対して手を差し伸べる。
「さて、いつまでもここにいるとさっきみたいな奴らが集まってくる、行こうか」
手の取らない私の手を無理矢理取り起こすと引っ張るようにして私を商店街のような場所に連れて行き……辿り着いたところは酒場のような場所だった。
「おーい! 祟り! こっち、こっちだ!」
「おうよ!」
手を繋いだまま祟りと呼ばれた男性は私を連れて畳座敷の上でお酒らしき物を飲んでいる仲間らしき人達の元に行き座ると、私にも座れと言ってきたので座った直後、周囲にいた人達が一斉に私を見る。
「な、なぁ……祟り、この女……人間?」
「ちげぇよ、座敷童子だ座敷童子、見てわかんねぇのかよ」
男性の言葉に周囲の人達がざわつき始めると祟りの反対側に座っていた着物姿の女性が言った。
「私から見てもこの子は座敷童子の匂いがする、私がそう言うんだから間違いないわよ」
その言葉に周囲の人達は騒ぐのを止めて座る。
「助かる」
「気にしないでいいさ」
小さな声で二人だけが聴こえる声で言い合いをすると直ぐに目の前に置かれている飲み物に手を伸ばす。
それを見て私も目の前の物を見て手を伸ばそうとした直後、祟りさんが目の前にあるコップを別の場所に置き、離れたところに置かれていたコップを取り私に渡してきた。
「こっちは酒、座敷童子の嬢ちゃんには強いから辞めときな、で……こっちは麦茶だから飲める」
そう言われ中身を確認し匂いを嗅いでみるとたしかに麦茶の香りがした。
それに一口、口を付けると祟りさんの反対側にいた着物の女性が私の隣に座り、コップを私に向けてきた。
「え?」
「乾杯だよ乾杯」
「あ、はい……」
言われるがまま持っていたコップを差し出すと向こうからコップを合わせて音がなった。
それと同時に女性は私をじっと見て微笑みコップを置くと両手を広げ私を突然抱きしめ引き寄せると私の耳に口元を近づけ小さな声で言った。
「あなた、座敷童子じゃなくて人間よね?」
最初のコメントを投稿しよう!