それは想いの先に

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 妖怪街から外に出て家に戻る道。  それは何度も通ったはずなのに今歩いている道から家まで本当は数十分かかるはずなのに数分で付いてしまった。  しかも人混みあったはずなのに誰一人としてぶつからないことに少し寂しさを感じながら私は自分の家……の扉を開ける。  すると音と共に家の中から母親がエプロンをしたまま玄関まで出て来て、本来ならどこまで行ってたの! やら、速く家に入りなさい! と言うはずの母親はエプロンで両手を拭くと……少し寂しそうに両手を後ろに回しながら私に対して言う。 「それがなのね、ずっと黙っていたのに……と言っても私も夢で見た程度だけど、あなたはそれ以上なのね、ふふ、ご先祖様がそうだったのならそれを色濃く受け継いだのがあな……ごめんなさい、雅だったのね」  寂しそうにそう言った後、笑顔で目に涙を溜めながら私を弱く力でしっかり抱きしめながら耳元で言った。 「……あなたはあなた、九重の家の私とお父さんの娘、雅よ、たとえどんな姿、形になってもね……だから、次来る時はお友達も一緒に連れて来なさい、それと……しっかりと、頑張ってきなさい! た・だ・し、学校はちゃんと行って卒業はしなさい! それ以降は自由でいいからっ、ね?」  そう言うと優しく私の体から離れ……笑顔を向けてくれたのと同時に私の姿が薄っすらと元の鬼姫の姿に戻りかけた。  しかしお母さんはそれを笑顔を見て言った。 「あら綺麗じゃない、本当はもっとしっかり見てあげたいけど……今はそれどころじゃないみたいね、ほら、行きなさい、お父さんには適当に説明しといてあげるから」  その言葉に微笑みながら頷いた私はゆっくりと扉を閉める。  その間、お母さんは笑顔で両手を振ってくれていた。 「ありがとう、お母さん……大好き」  私はその言葉を家の前に残し……姿を消した。
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