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あれからとこれから
「あれから……もう一年? 二年? どれくらい経った?」
「さぁ? 私達には歳なんて関係ないし……」
「一応はあるだろ、ところでみや……じゃなかった鬼姫様、つい最近銀九尾とあの善居穿ツに勝つなんて……な、俺の修行はなんだったのか」
最初は喜んでいた男だったが直ぐに肩を落とし泣きそうな顔をし始めた。
そんな相手の肩を叩きからかうような笑みを浮かべながら隣で着物姿の女が言う。
「ふふふ、良いことを教えてあげるわ、私も銀九尾に一対一で勝って、善居穿ツと良い勝負をできるようになったのよ!」
「良い勝負ぐらい俺にもできる……で、本当に勝てたのは鬼姫様だけか?」
「そうねぇ……」
あの後……色々な出来事が起こった。
私は雅の名前をそのままに鬼姫として妖怪としてこの妖怪街に住み着いた。
と言っても他の場所だと危険だと言われ穿お爺ちゃんのところでお世話になっている。
そして……他の妖怪達とも仲良くなったはいいけど、どうにも虫が付くのを気に入らないお爺ちゃんは善居穿ツと言う最強の妖怪に姿を戻し、今度は私のお爺ちゃんではなくお父さんと名乗り、勝った者を夫にするとか言う馬鹿な話を始めてしまった。
まぁ、そんな馬鹿な話を妖怪達は喜び楽しみ、日々挑みに行っている。
そんなやり取りが最初から今まで続いている。
そして私と丹草君こと祟り一文字、火子こと火の神は無事高校を卒業し、今では大学……でも、専門学校でもなく……ここ妖怪街で仕事をしている。
私は銀九尾さんのところで酔っ払いの介抱やら世話……じゃなくて病人の世話などを。
祟りは毎日、善居穿ツに挑み続けて自分こそが鬼姫の夫だと騒ぎ続けている、もちろん私からすれば彼氏? に夫? にしたいのは祟りだと思っている。
そして火の神は妖怪街で悪さをする者達を止めたりする警察のようなこと悪羅と一緒に始めている。
けど……この二人、目が会うたびに喧嘩をしている気がする。
それと火の神も何故か善居穿ツに勝ち私を嫁に向かえるとか言う戦いを何故か祟りと争っている。
そんな中で一番驚いたのが……。
「夜鴉、次はどこに行く? 今日は休みだからどこへでも行くよ!」
「じゃ、じゃあ……服とかみたいかも……!」
あれから数ヶ月、風神は最初女だと言うことに驚いた夜鴉に告白し付き合い始めた。
すると夜鴉は今までの服装を辞めて女の子の服装をし風神と手を繋ぎ日々を楽しみだした。
一方、元相方の雷神は日々、善居穿ツに挑み火の神みたいなことをしながら銀九尾の元に行き、自分もここで働かせろと騒いでいる。
「それで祟りはどうして様付け?」
「そりゃあ、善居穿ツの娘にして善居穿ツに勝った存在だ、なら様付けで呼ばないと失礼だろ?」
まるでからかうように言うその笑顔を見て私は呆れたような顔をして座っていた席から立ち上がり言う。
「あっそぅ、なら様付けする相手を嫁にするだのなんだの言わないほうがいいわよ」
「えっ?! あ、わ、悪い! ほら? な?」
私がそう言う態度を取ると慌てて立ち上がり……私の目の前に立つと様付けを止めて、次は勝つと宣言するのを見て火の神は笑っていた。
そんなやり取りから半年……。
次は勝つと言う祟り一文字の宣言は数十回に及びながらも何とか勝つことができた。
と言っても数十戦特別に相手をして貰った後の疲労困憊の中だったような気もするけど……無事、祟り一文字が勝ち鬼姫と結婚……ではなく。
付き合うことが認められた。
善居穿ツからすれば最大限の嫌がらせであり、私も面白そうだったからそれで納得してしまった。
その所為か、今度は本気の本気状態の善居穿ツと私こと、鬼姫の二人に勝つことで嫁にやると話になったのである。
この話の中、火の神も雷神も善居穿ツには手加減されながらも勝利していることは祟りも知らない。
そんなある日……。
私は人間の九重雅へと姿を戻し、妖怪街から外に出ていた。
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