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始まりの予感
私の名前は九重雅、高校二年。
学校で女友達とは仲良く話すけど、クラスメイトの男子は滅多に話しかけてこない。
けれども……そんな中、私に話しかけてくれる男子がいた。
「九重さん、おはよう」
名前は丹草纏君。
一年の頃から同じクラスで一度、隣の席になった時に何かで話が弾みそれ以降、話したり話しかけられたり、そんな仲になっている。
そして毎朝、学校の教室で顔合わせると決まって丹草君からおはよう、と笑顔で言ってくれる。
それに対して私もおはようと返す。
人見知りはしないらしく男女問わず話しかけられることが多いのは見ていてわかる、けれどもそんな丹草君なのに放課後は誰とも帰らない。
学校で仲の良い友達も私よりも明らかに可愛い女子の誘いも決して受けず一人で帰っている。
そんな丹草君と無理矢理一緒に帰ろうとすると突然姿を消された、と言う話を聴いたことがある。
そのせいか変な噂が流れて丹草君を誘う人はいなくなった。
「ねぇ、雅聞いた? あの丹草に美人の彼女がいるって噂」
「そうなの?」
「そうそう、なんでも京都とかにいる芸者さんみたいで…………」
友達の話を全て聴くとどうやら帰り道で丹草君を見つけると着物姿の美人さんが嬉しそうに丹草君の腕を両手で掴み一緒に帰っているのを目撃したらしい。
で、後を付けて行くとホテルとかが並んでいる付近で二人で姿を消した、とのことだった。
「それも噂? それとも本当の話?」
「芸者さんは本当らしいよ、後半は私も友達から聴いたから本当かどうかはわからないけど、雅ってさ、丹草と仲いいじゃん? その辺気にならないの?」
特別な感情があるわけでも、彼氏でもない友達。
そんな相手に対して言われた言葉に私は無言で首を横に振った。
それを見た友達は何も言わず軽く微笑みその話は終わった。
それから数日後。
私は部活あるクラスメイトと別れ一人で帰っていると丹草君……と噂の着物美人さんを見かけた。
友達の話通り、仲良く? 丹草君側は手を握ったり、腕を組むために腕を出す様子はなく、美人さんから一方的に腕を組みに行っているだけだった。
「どうしようかなぁ」
小さく独り言を漏らした私は……前を歩く二人の後を気づかれないように付いて行くと、噂通りホテル付近を二人で歩いていたがホテルの方にはいかず建物が多く立ち並ぶ場所から離れて行った。
そして数十分後、その二人が辿り着いたのは……寂れた神社の前だった。
そんな神社に向かう階段を二人で上って行くのを確認した私は気づかれないように半分ぐらい上った後、後を追いかけた。
しかし、階段を上り終えた私の目の前に二人の姿はなく、あったのは寂れた神社の鳥居と建物だけ。
「どこに……?」
突然目の前から消えた。
だとしても、そんなわけはないと思った私は神社の鳥居から中に入ろうと足を進めた直後、私の肩腕が青色の透明な円の中に入っていて見えなくなっていた。
「ぇ……なにこれ……うそ……」
けれども痛みなどはない。
それに気づいた私は片腕をそこから出そうとした直後、中側から思いっきり引っ張れ、私の体は青色の円の中に吸い込まれてしまった。
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