容疑者集合

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容疑者集合

 我修院邸に滞在している全員が、亀端警部の要請で居間に集められた。  絞殺体で発見された、当主の我修院光彦の長男・光治(こうじ)。父親から譲られた票田を引き継ぎ、既に衆議院議員も2期目に入り、この秋には総選挙が控えている。居間の右奥、奥方の貴美子(きみこ)と並び、暖炉に近いソファに腰掛けている。  彼らから最も離れたベランダに近いソファに座るのは、次男の聡司(そうじ)。祖父が始めた小さな衣料品メーカーを受け継いだ後、「Gussyu(ガッシュー)」という若者向けアパレル企業を立ち上げ、リーズナブルなブランド展開で成功を納めている。彼の伴侶は、元アイドルグループ「E⭐S(エブリースター)」でセンターも務めたAYAKA(あやか)こと彩夏だ。彼女は、自らプロデュースするファッションブランドの会議のため、ここには来ていない。  長男と次男のちょうど中間辺りで毛布に包まっているのは、三男の優志(ゆうじ)だ。昨夜から熱を出したそうで、額に冷感パッドを貼りマスクを付けている。少し顔が赤く、1人掛けのソファに身を沈めていても辛そうだ。  現在、洛央(らくおう)芸術大学の大学院に在学中で、専攻する日本画で二科展の入賞経験もあるという。独身だが浮いた噂は耳にしない。  光彦の妻、玲子(れいこ)は10年以上前に他界している。三兄弟は腹違いだ。玲子の実子は光治のみで、婚外子の聡司・優志は認知されたものの、各々の妾宅で育った。  室内には他に――。  光治達の側のソファに、彼の第一秘書の北条清史郎(ほうじょうせいしろう)、聡司に近い位置のソファに、顧問弁護士の灰田要二(はいだようじ)、優志の背後の壁際には、使用人達――光彦の執事・宇治原太一(うじはらたいち)、お手伝いの遠山鏡子(とおやまきょうこ)近藤波那(こんどうはな)が立っている。  寝た切りの病人とはいえ、背後から絞殺した手口を考えると、犯行は男の可能性が高いと踏んでいるが、断言は出来ない。  普段この屋敷には、光彦の他、身の回りの世話をするために使用人達のみが暮らしていた。ところが昨夜に限って、三兄弟と秘書、顧問弁護士までもが揃っていた。何故なら、今夜、光彦は関係者全員を前に、遺言書を書き直すつもりでいたのだという――。
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