オンラインで訊け!

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オンラインで訊け!

『お疲れのところ、ご協力に感謝します。これまでの捜査から、犯人はあなた方31だと絞り込めました。私は、更にを疑っておりますが、確信を得るため、皆さんにお話を伺いたいのです。では、これからお1人ずつ順に繋がせていただきます。他の方には音声は聞こえませんので、ご安心ください』  オンライン会議システムMoveは、主催者から送られてきた専用ルームのアドレスにアクセスし、入力したパスワードが認証されることで会議に参加できる。参加者全員で会話することも可能だが、主催者が他の参加者の音声をシャットアウトして、特定の参加者とだけ会話するオプションがある。  上杉は、このオプションを使って、任意の事情聴取を行おうというのだった。  三兄弟は、亀端警部の捜査協力要請に従い、それぞれ邸内の個室に移ると、彼ら個人のスマホから会議に参加した。  冒頭の口上を済ませた上杉は、最初に光治にだけ音声を繋いだ。残りの2人は、映像しか見られないから、表情で会話の内容を推測するしかない。 『では、光治さん。率直に伺います。犯人は、さんですな』 「まっ、まさか! 何を根拠に?」  仕事部屋にいる光治は、執務机の革張りのチェアからビクリと身を起こした。父親似の太い眉が怪訝に歪められる。 『亀端警部がお話を伺った時、彼が、ご自身のアリバイを強調しました』 「あれは、本当に優志が心配だったんだ。あいつは優しいんです」 『総司さんの会社は、今期大赤字になるそうじゃありませんか。早く纏まった金が欲しい筈です』 「それだけでは、証拠にならんでしょう」 『では、あなたは……犯人がさんだとお考えですか?』 「……えっ? いや、まさか」  再び、焦りの表情が滲む。自ら犯人だと白状しない限り、一方を否定すれば、もう一方を肯定することになる。 『優志さんは、お父上に海外留学を反対されていたそうですね』 「ああ……だが、そんなことで殺しは……」 『弾み、ということもありますが?』 「第一、優志は熱があったんだ。いくら父が弱っているからって、無理でしょう」 『では、あなたはどちらの犯行だとお考えですか?』 「それを調べるのが、君達の仕事じゃないのかね」 『……いいでしょう。ひとまず、会話を切ります。このままお待ちください』  光治は、頷くとチェアにドサリと身を沈めた。  上杉は、続いて総司と繋いだ。彼に『犯人はだ』と伝えると、激しく否定された。『では、の犯行だと思うのか』と問い詰めれば、一瞬言葉に詰まる。 「兄貴には、親父を殺す理由がないだろう」 『おや、政治献金の件で揉めていると伺っておりますが』 「……北条か。アイツ……」 『総司さん。光治さん殺害動機がないと仰った。優志さんあるとお考えですね?』 「アンタね……それは、言葉のアヤですよ。俺達、誰にも動機なんかありません」 『……そういうことにしておきましょう。一旦、会話を切ります。このままお待ちください』  総司からは、敵意に満ちた眼差しだけが返された。  最後に繋いだ優志は、相変わらず辛そうな様子で、ベッドの上で毛布に包まっている。スマホは、ベッドサイドのテーブルに置いてあるようだ。  上杉が『犯人はだ』と断言すると、彼は低く笑った。政治献金の動機を指摘しても、彼は長男が如何に父親想いなのかを強調するだけで、まるで真に受けない。  『では、だと思うのか』と問えば、またしても引き攣ったように笑う。そして――。 「それもありませんよ。疑われるなら、僕でしょう」 『ほう。それは何故です?』 「ご存知ですよね。僕が留学のことで、父さんと言い争っていたって」 『それが殺害動機になりますか?』 「……どうでしょう。でも、僕はやってないですよ」 『お父上をお好きでしたか』 「……さぁ。少なくとも、憎んではなかったです」 『分かりました。会話を切ります。このままお待ちください』  上杉は、もう1人の参加者、亀端警部とだけ繋いだ。 『警部、犯人が分かりました』
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