同じ足あと

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 普段の生活で私が一番困っていたのは体育の授業だ。弊害といってもできないわけではないし、手は動くし、私はみんなと一緒に授業に参加させられていた。ただ本来あるべき能力は出せないし、体力測定においても必然的に平均以下の数値を出してしまう。全力でスポーツに取り組み、自分の力を発揮しているクラスメートたちを、私は羨望の眼差しで見つめていた。  それでも私は体育が嫌いだったわけではない。普段制限がかかっているせいか、身体を動かすのは誰よりも楽しく、また私は体力が有り余っていた。  もう一つ、私にとってはこれが最も憂うつであったかもしれない。『遊ぶこと』である。  鬼ごっこやかくれんぼ、外遊びは小学生にとって大好物である。上述の通り体力の有り余っていた私は、それらをしている時、特に生き生きとしていたことだろう。私も義足になってからはみんなと外遊びをするようになった。けれども当初は楽しかったものの、私がいると遠慮するのか、次第にみんな私を追わなくなったり、本気を出さなかったりするようになった。  家でゲームをするのは別として、学年が上がるにつれ、私は外遊びでは自ずから距離を置くようになった。それは水を差して彼らに嫌われないようにする、私なりの配慮だった。みんなが楽しそうに校庭で走っているのを、私はよく教室の窓から寂しい気持ちで眺めていた。
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