雨の日は、同じ傘の下で。

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「3回も拒絶されたから、ダメかも」  ゆっくりと傘から出ようとする。わたしは咄嗟にその腕を掴んだ。 「もうしないから!」  ワタルくんは心なしかニヤニヤしている。大人しく傘の下に戻った。 「待って、3回じゃなくて、2回でしょ?」 「3回です。サークルの天体観測と、文化祭の最終日と、この間の歩道橋と」 「…………」  あぁ、そうか。涼以外と相合傘するのを拒んだ時か。でもあれは最終的に受け入れたんだけど。 「……わたし、涼のことは、ずっと、好きなままだよ」  そう言うとワタルくんは、わたしを見た。 「そうじゃなきゃ困る」 「え?」  予想外の答えにうろたえた。ワタルくんは続ける。 「兄貴を好きな優花が好きなので」  サラリと呼ばれた名前と、サラリと言われた好意に、顔が熱くなった。涼の前でなんてことを。  パクパクと口だけしか動かないわたしに、ワタルくんは畳み掛ける。 「で、優花は俺のことどう思ってんの」 「えっと……あの……」  目が泳ぐ。視界の端には、涼が居る。もう誤魔化せない。思わず俯いた。
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