呪われた一日

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「明日香ちゃんはチロのことを心配しただけだろ? それなのに、オマエのせいで友達ができない、なんて八つ当たりにもほどがあるよなー」   「そんな言い方してないよ。ていうか、チロって呼ばないでもらっていいかな」   「え? 呼び捨て嫌なの?」   「ううん、私は千鶴っていうの。ペンネームはチロだけど、本名は千鶴。ここ大学の近くだから、知り合いに会うとチロってなに? って思われるだろうし……っていうか、その前にこんなオッサンといっしょにいるの見られたら終わりだあ……!!」   「凄まじく失礼だな、君」    はあ、とため息が聞こえて、ハッとする。   「平日の昼間に急に呼び出しといて、五分遅れでちゃんと来た俺と一緒にいるのを見られたら終わり? 俺も暇じゃないんだよ? 少なくともヨウコちゃんと会えるって事実に君は助けられたんだよね?」   「……ごめんなさい」    そうだ。平日の昼間なのだ。少しだけ(よぎ)った「女子大生じゃない」という可能性も、平日の昼間にこんな場所を了承してくれた時点で消えてしまっていた。けど、オッサンが平日の昼間に何でここに……   「さっきからその心の声まあまあ丸聞こえだからな? 失礼極まりないけど、俺のことも教えてあげるよ」    そう言ったヨウコちゃんはニヤリと笑った。   「これも、なにかのご縁だろうから」  
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