呪われた一日

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 そうして私は、全身へ鳥肌を立たせることに成功した。 「俺もチロと一緒の、夢を追う旅人だよ。  今はちょっと休憩中なのさ」  まるで突然別人になったみたいに、場の空気ががらりと変わって思わず息を呑む。それにしても一体何のつもりなのだろう、その口調は。 「き、キモイ……」 「……あのねえ、ホントに君大人しいの? 残念ながら控えめで可愛い要素どこにも見当たらないよ?」 「それは明日香と一緒にいるときの、いつもの私ですから」  私の中には、いろんな私がいる。  大半は、明日香といるときの控えめで可愛らしい雰囲気の私。けれど、心の中では、いつか小説家になりたいってメラメラ闘志を燃やして努力し続ける私もいる。人のことをキツく罵倒したり、臭いセリフを吐くことなんて厭わない私もいるのだ。  でも後者は誰にも見せない私だったのに、今日その殻を破ってしまった。  うわあ、どうしよう。この人と会ったことで、「わーあの女子大生、こんなエッチなことも書くんだ。やらしい」とか思われたらもうオシマイだ。恥ずかしすぎて死ねる。執筆の幅が狭まってしまったじゃないか。もう、私の馬鹿野郎! 「なんか……チロって生きづらそうだね」  絶妙な顔をしたヨウコちゃんは、同情するように私の頭を撫でた。
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