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主導権を握るのは無理か、と笑いそうになって右手を引こうとしたら、やはり簡単に掴まれる。図体だけは、無駄に大きくなったものだ。 「ムラムラしてきた?」 今度こそ離れた唇に呟いて茶化すように笑ったら、真剣そうな瞳とぶつかった。私のすべてを壊す瞳。 「ずっとしてたよ。お前が知らないフリしてただけだろ?」 「どうかな。今初めて知ったけど」 「へえ、じゃあわかるまで寝かせねえから」 「おお、そういうこと言うんだ。男っぽい」 「お前な……」 呆れたような声に笑って掠めるように唇を奪った。その刹那に瞳の色が変わる。もう何度も見た。 何度も避けた瞳だった。まるで、私が欲しくて仕方がないみたいな瞳だ。 「はぐらかすなよ」 「はぐらかして、ないよ」 「嘘吐け、なかったことにするくせに」 「そっちの方が、あんたも都合良いくせに」 「わかってねえフリは、もうさせねぇから」 図星をさすように強い瞳で射抜かれて、呼吸が止まった。もう何年も前から止まっていたはずなのに、改めて息の根から止められたみたいだと思った。 呆気なく素肌に触れられて、この世で最も陳腐な言葉を吐きそうになった。堪えるようにその男の唇に押し込む。
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