きみはあくまで

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美里の妊娠を知ったのは、ちょうど美里が俺に「全部忘れるよ」と泣いた日から3ヶ月後だった。「妊娠3ヶ月らしい」と聞いたとき、俺は間違いなく、信二ではなく俺の子だと思った。そうであってほしいという願望にも近い。 ただ、その命が俺と美里のものだと言う人間は一人もいなかった。 それこそが結論だった。始まる前からわかっていた、永遠に変わらない事実だった。 兄妹で愛し合うなんて、馬鹿げている。あり得ないことだ。 「ママ、まだかえらないのー?」 ついさっきまで俺を引き止めることに躍起になっていたくせに、いつの間に伊央は美里の手を引いて、帰宅をせがんでいる。タイムリミットがきた。 意味深な投げかけをして美里の興味を引いたくせに、結局真実なんて知るつもりもない自分がいる。それが俺と何のつながりもないものだと知った瞬間に、俺の何かが勝手に粉々になる予感が消えないからだ。 「もう帰るよ」 いつまでも消えることのない感情を引っさげて、俺はどこへ行くと言うのだろう。帰る場所はない。はじめから、美里以外になかった。 「ひーちゃん、またね」 「ああ、またな」 いっそ忘れてしまえばいい。勝手に幸せを掴んだ姉を祝福して、このクソみたいな感情を捨ててしまえばいい。俺を忘れた美里と同じように、俺も美里を忘れてしまえばいい。そう思うのに、できるわけがなかった。 「光、またいつでもおいで。伊央が待ってる」
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