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言動に行動は伴わない。いつもの会話と同じように話しているのに、その手だけはしっかりとタブーに触れていた。 「うおー、やべえ、マジでおっぱいあるじゃん」 「なにそれ、おっぱいは生まれてこの方ずっとここに存在してくれてるんだけど?」 「いや、そうなんだけどね? 実感として、そういうのあるじゃん。やべ、ちょっと興奮してきた」 さっきだって興奮しているようなことを言っていたくせに、この男は何を言うのだ。シラケた目で見たら、そんな目で見ないで、と茶化される。それを笑っていたら塞ぐように唇が降ってきた。 形の良い唇が、何人もの女性を慰めてきたのを知っている。それと同じように慰められているのだと思うと可笑しいけれど、きっと私は、誰よりもそれを望んでいた。 軽く触れるだけの唇が、私からゆっくりと離れそうになって無意識に右手を彼の頭の裏に寄せた。緩く撫でると熱が伝わってくる。その体温があまりにも熱すぎるから、欲情していると他人事のように思った。 目を軽く見開いた彼を無視して舌を差し込む。 歯列をゆっくりとなぞって、好きなように舌を動かそうとすると、やつのそれにあっさりと邪魔された。
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