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義務のような愛撫と接吻をこなす休日。求めていない、求められていない。他人と呼ぶには近すぎる距離が、肩書き故の責任を、私とあなたに押しつけます。
誰も望んでいないのに。
ああ、どうして、ばかみたい。
「もうずいぶん伸びたなぁ」
お風呂上がりに、あなたはいつも優しく髪を拭いてくれます。腰あたりまで伸びた私の髪を、おもしろそうに後ろから眺める、その声色もまるで少年のよう。幼い頃から変わらないその声に、思わず笑みがこぼれます。
「ふふ。そうでしょう」
「どこまで伸ばすつもりなんだい」
「切りませんよ。願かけ、ですから」
「願かけ?」
振り向かなくとも分かる、小首を傾げるその動作。いとおしい、かわいらしい、何にも知らない無知な人。騙されているのはあなたの方なのに、何にも知らないふりをする私を、傷つけまいと抱き締める。蔦のように絡まるその腕に、圧迫感を抱きながら、私は祈るように目を閉じます。
別に、夫婦の真似事なんかしなくてもいいのに。
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