金曜日

あなたは覚悟を決めたように、私とともに笑い、おかえり、ただいま、なんてままごとのように言葉を交わし、夫婦らしく口づけをしてくださいました。

ですが、それも一時のこと。
儚い、うたかたの夢でした。

金曜日になると、あなたは決まって遅く帰ってくるようになりました。

仕事が忙しくて。上司と酒を飲んでいて――ああ、言い訳を繰り返すその唇に、女が潜んでいるのね。分かっているのです、そんなこと。

あなたは結局、捨てきれなかったのですね。いいえ、捨てられなかったのはきっと私の方。私を切り捨てることができなかったの。

どこかの誰かが言った戯れごとを思い出します。「もしふたりの人を好きになったら、あとの方を選びなさい。なぜなら、本当にその人のことを好きなら、他の人など愛さないはずだから」と。

私はきっと、一番目。一番乗りしたはいいけれど、でもきっと、それだけなのね。

いつからか私は、女ではなく、恋人ではなく、家族になってしまいました。大切にはしてもらっているのだけれど、もう恋ではないのです。

いつまでも乙女のように、あなたに恋をしていたかった。私に恋をしていてほしかった。あなたは私を優しく抱いてくれるけれど、そこに楽しさはありません。慈悲、そして、情。愛情の、残りカス。

きっとその何倍も、あなたは他の誰かに愛を与えているのでしょう。分かっています、そんなこと。気づいています。白い服を桃色に汚す、その頬紅。ああ、みじめ、みじめね。

いっそのこと突き放してくれたら、私は楽になれるのに。それすらしない、なんて弱虫。体裁など、面子など、何の意味もないから、もう捨ててしまいなさい。残り物の愛で満たされるような、安い女ではありません。ひとりだって生きていけます。私、そんなに弱くはありません。

それでも手放せないと言うのなら、きちんと隠し通してくださいませ。金魚のようにゆらゆら揺れる、小さくてかわいいあの子の影を、上手に上手に隠してください。

それができないと言うのならどうか、

私の肌に、飽きないで。