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お前は誰なんだ。  オレンジと白の縞模様を眺める。ゆっくり道を横断していくこいつは何者だ。冬の雲もない晴れた午後、日照りのところですら冷たい空気に包まれ人間では太刀打ちできない世界でどこを目指しているのか。生きる場所か死ぬ場所か。  前者であればお前を軽蔑するだろう。お前からは生きたいという意思も、感情も、希望も伝わってこない。お前にあるのは汚い欲だけだ。食べたい。寝たい。抱きたい。欲でできている体を土で汚し毛の中にはノミが踊り狂っている。そんなものを誰が生かしたいと思うのか。お前は死ななければならない、だれにもみとられず、誰にも気づかれずに。叫ばず静かに。  後者であれば歓迎するだろう。私はお前と共にその場所を探す事もできる。必要ならばお前が尽きる最後の時までそばにいてやる事も。そうだ。お前の為に一緒に死んでやる覚悟もできている。私は大丈夫だ。私などに誰もいない何もない。私を認識している者などいない。お前と同じケモノだ。 私はお前だ。 お前は私だ。
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