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『あ、こんばんは。リョウ君。元気?』
スマホから聴こえるケント君の声。
それは私だけに向けられたものではないけれど、私にも他の誰かにも等しく優しい甘い響きを持っていた。
そう。私はケント君のことを何も知らない。
この…配信アプリの中で優しく話す彼のこと以外は、何も。
『今日はね、大学行ってきたんだけど時間間違えてさ…久しぶりに図書館行ってきたよ。』
「図書館いいね。私もよく行ってたなぁ。」
彼の声で紡がれる取り止めのない会話に、私はコメントで相槌を打ったり打たなかったり。
それは他の人も同じでそのコメントを拾いながらケント君は楽しそうに話す。
『え?本読むよ。読まなそうって酷くない?これでも大学生なんだから。」
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