16人が本棚に入れています
本棚に追加
かおるさんはにこっと笑って踵を返す。後ろをついて行くと、そこから見えるビルの地下へ入って行く。一階はフィリピンパブ、上にはインターナショナルクラブなんかが入ってる雑居ビルだ。
あんまり明るくない短い通路の突き当たりに、黒い重そうなドア。そこに書いてあるのは、THUNDER&LIGHTNINGって文字。ここが、和馬さんのバーなのか。
かおるさんがノブに触れる前に手を伸ばして、ドアを押す。すげぇ重たい。飲食店じゃなくて、ライブハウスみたいだ。
中を見るより先に、かおるさんを通す。
「おはよ、和馬」
「おーう」
のんびりしたしゃがれ声。あれ、想像してたのとちょっと印象が違う。もっとこう……ギラギラした感じのオヤジじゃねぇのか?
続いて中へ入って、ドアを閉める。やっぱりドアは分厚くて、ガッチリしたレバーになってるノブで密閉出来る。これ、防音仕様だ。
さあ、和馬さんとご対面だ。ここはビビらずにちゃんと挨拶を……。
「はじめまし……」
言いながら、俺より背の高い和馬さんの顔を見上げる。
最初のコメントを投稿しよう!