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 一礼すると、にこやかに手を差し出してくれた。俺はその手を握る。デカい手だ。これぞドラマーって感じの。この手が、その足が、あの音を叩き出すのか。 「よろしくな、マオくん」  気さくそうだ。あの時の感謝もあいまって、一気に好感度爆上げ。すげぇ怖いオーラ出してんじゃねぇかと思ってたから、その落差もある。穏やかそうな感じだ。 「マオのも貸して」  かおるさんは俺が提げたままだったコンビニ袋を奪っていく。 「適当にあっためるもの、あっためとくわよ?」 「あ、さーせん! 俺が」 「やっとくわ。和馬、キッチン借りるわよ」 「散らかすなよ」 「あたしを何だと思ってんの」  かおるさんはあれこれ手に持って、カウンターの中から奥に入って行った。  店内を見回してみる。カウンターの背後はフロアになっていて、テーブルが出てる。テーブルとっぱらったら、100人くらい入るかな。その一角に少しだけ高くなっているスペースがあり、そこにはドラムセットが置かれている。その両脇にはアンプ。上手はギターアンプ、下手はベースアンプってスタンダードな配置。
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