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 キラキラ揺らめくシャンデリア。黒い壁に、ビロードのソファ。爆音のクラブミュージック。薄暗くてムーディな間接照明。  テーブルに並ぶのは、水割りセットと鏡月だ。 「マジ信じらんない」  肩を抱き寄せてる女が、腹立たしげに吐き出す。  黒髪のボブで、お嬢さん風のベージュのワンピース。メイクもナチュラル。パッと見は清楚などこぞの御令嬢だ。 「最近待機があるからおかしいと思ってたんだ。あの店長、マジでカス」  こう見えて、箱型高級ヘルスのナンバーワンちゃん。知らない間に、店のサイトでのプッシュがなくなってて、ピチピチの新人18歳が猛プッシュされてたっつってお冠だ。  この子、可愛いかっていうと……俺の好みではない、とだけ言っとくか。  そんでも俺のエース様なんでね。めんどくさいけど、まだまだ続く愚痴を聞く。適当にひどいなー、とか相槌打ちながら。いいんだよ。同意して欲しいだけなんだから。 「ただでもコロナで客来ないのにさ。こんなんじゃマオをナンバーワンにしてやれないじゃん」  マオ、が俺の源氏名。本名とは全然関係ない。 「無理しないでよ。俺はアユミが来てくれるだけで嬉しいからさ」
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